そして私はニートになった… その11 順風満帆からの失意

新しい職につき、最初はパートタイマーからスタートでしたが、私の働きぶりから、新工場が完成時にそこの責任者に抜擢され、職員になります。民間の会社で、給料は良くはないですが、その会社の社長が商工会の会長をしていましたので、地元では、名のしれた会社でした。


平穏無事に日々は続き、恋人も出来、順風満帆でした。トラブル等もありましたが、基本的にはそつなくこなし、その会社ではそれなりの立場に立つ事が出来ました。ただ、給料はあまり変わらず、正直不満もありました。いわゆるブラック企業でしたので、残業代はでるはずも無く休日は良くて月に4日、半年休日がなかった事もありましたし、2日間寝ないでぶっ通しで作業をした事もあります。傍目から見ればおかしな環境でしたが、私はその仕事が好きだった為に続ける事が出来ていたのです。

金銭面については、投資を学ぶ事により改善する努力をし、年間の確定申告をしなくてすむ程度の利益をだし、会社への不満を消していました。

直属の上司(社長の息子であり専務、ともうひとりの女性上司)とは私の性格ですから、ぶつかる事もありましたが、あくまで個人的な事ではなく仕事に対する方向性や姿勢でのぶつかり合いでしたので、腑に落ちない事でも、飲み込み、あくまで会社の利益の為、会社で働く方達の待遇の改善や、会社が抱えるリスクの回避を思い働いておりました。
だからこそ、周りの人間も認めてくれていたのです。


しかし、直属の上司が抱える部門の名前が売れて来た時期より、おかしな事が増え始めるのです。女性上司が鬱気味になり一切会社に出てこなくなり、心配はありましたが、専務がその女性上司の所へ通い詰めていたので、気にせずお任せしておりました。最初の違和感はこれでした。


次に不安にかられたのは、私も忙しさにかまけ、気付くのが遅れたのですが、その時我々が行っていた事業、どう簡単に計算しても、やればやるほど赤字だったのです。それに気づいてからは何度か進言したのですが専務には取り合って頂けなかったのです。何故かこの時上司2人はかなりの利益が上がっていると誤解していました。

ただ、別の部門ではしっかり利益はありましたし、私達の事業は新規事業であり、初期投資もかかり、宣伝費もかけなくてはならない時期でしたので、正直多少赤字でも今後で挽回できると踏んでおりましたので、私もあまり強くは進言しませんでした。


そんな中で、会社の事務員が悲しそうな顔で私や他数名に相談を持ちかけました。それは「検便を他人の分も提出して欲しい」との事で、私は思わず聞いてしまいました、偽装ですよね?と…

職種によって検便の検査結果の提出を義務づけられる仕事があります、飲食店や病院や学校等施設の給食、これは食中毒等の蔓延を防ぐものでもあり、予防であります。当然検査結果が悪ければ結果が改善されるまで、調理等する事は禁止されます。また、これは企業が自らを自営する為でもあります、食中毒が発生した場合、事前にしっかり検査をしておけば、責任の所在や原因解明に役立ち、リスクの回避となるからです。病院給食等、死に直結してしまう可能性もあり、シビアに行われています。これを偽装してしまうということは、企業同士の信頼関係に泥をぬり、会社倒産のリスクをも背負う事となるのです。(ある販売業では、検便結果偽装の内部告発により、取引先を何百社も減らしています。)

当然、事務員もそれを解っています、だからこその渋い顔でした。しかし、私の直属上司は解っていなかったのでしょう。何故そうなったのか事務員に理由を聞くとその理由が、女上司が検便をだしたくないというアホな理由でした、ならばその女上司を検便が必要な施設に入れなければ良いとも言いましたが、もう一人の上司である専務がそれを嫌がったとの事。

事務員の疲れきった顔と、私がそれをしなければ、単に他の人間に頼むだけとの事でしたので、私と他数名がそれをする事になりました。誰かが、飼い犬の糞を入れようとしていましたが、全力で止めました。結局私はここでも不正に手を貸す事になります。



※そのしばらく後に、専務自身が検便偽装して会社を潰す気かなどとおっしゃっておりましたので、今は無いと信じています。最初に偽装をさせたのもそれを許したのも専務でしたので、恐らく後に気づかされたのでしょう。