そして私はニートになった… その12 疑心が始まるとイライラが募る

またしても、不正に手を貸してしまった私は酷く自己嫌悪しますが、仕事に没頭する事によりそれを忘れさせます。専務が偽装をする事がどういう事か気付く前、偽装自体は何度も行われていたそうです、結局私がいないときは別の人間に頼んでいたそうで…


そんな中でも、新規事業は販売先を増やし、都市部に事務所を構える事になります。この事務所は女上司の部屋兼事務所という形をとる事になりますが、私はこれにも違和感を覚えていました。


ある日、私が京都に出張していた時、夜突然携帯が鳴ります。相手は私の同僚で、仕事の出来る人、後から入社した方ですが私も一目おいている方でした。電話の内容を聞いて愕然とします。

私のいない間に、急に会議があり、凄く怒鳴られたとの事でした。それは、私達は赤字と気付きながらも、節約し、少しでも利益をと奮闘していたのですが、私達の直属の上司2人は本気で黒字だったと思っていたそうです。それがどうも、ちょうど私のいない時に上司2人が社長に呼ばれたらしく、結果私達の想像を超える赤字で、社長からかなりのお叱りを受けた様でした。そして社長から事業計画書を出せとのお達しだったそうです。私の同僚と他数名は散々罵られた後に、事業計画書の提出を任された様でした。


私はあきれました、何度も利益が出ていない事は進言していたのに…同僚も販売価格の見直し等も進言していたのに…、私と同僚はある程度赤字の原因は解っていました。相談しながら事業計画書をつくるのも手伝いました。無事完成し、それを提出したそうですが、最終的に専務により都合の悪い部分は消され、改竄され社長に提出されたそうです。そして、最悪な事に赤字の原因を全てある部分に押し付けたのです。確かに、その部分にも原因の一手はありましたが、それはあくまで原因の一部分でしかなかったのですが、そこに従事する人間に責任を押し付け安かったのでしょう。


私も同僚もこの頃は完全に会社に不信感を抱いていました、同僚が会社を辞める相談をしてきた事もあります。そして、周囲からも不満の声が上がり、私もそれを抑えてはいましたが、正直直属上司2人には、頭にきていました。


そんなある日妙な噂が立ちます、直属上司2人が出来ていると…私も薄々感じてはいましたが、かたや専務は妻子持ち、まして社長の息子です。新規に事業を立ち上げたのは直属上司2人からだったので、まぁそう見えても仕方ないよなと思っていました。ただ、直属上司2人な不倫の話は従業員からもあがり、嫌悪感を抱く人間はどんどん増えていきます。


私は悪い噂と思っていましたが、ある古参の職員が一言「そういえば、女上司が鬱っぽくなり専務が通い詰めてたころ、専務の奥さんの妊娠発覚した時期だよね…」

その通りでした。流石に私も直属上司と繋がりのある方に相談します。すると…「あれ?知らなかったの?おまえんとこの事務員もそれでばらく悩んでたんだぞ…あいつらも良くやるよな(笑)」

私は、悲しくなりました。それが事実だとすると、検便偽装もそうですが、今まで腑に落ちなかった事が何故起こったか…全て納得出来ました、同僚が受けていた仕打ちも納得がいったのです。


ここで私は余計な事をします、積もり積もった事が溢れたのでしょう。事実の解明の為に本人に直接電話をかけカマをかけたのです。結果怒鳴られました、「それで、何が悪い!会社やお前に迷惑かけたか!」私のカマに対してひらきなおります。そして、後ろからは女上司の声。私は否定して欲しかったのだ、そして時間が解決してくれるまで、騙されようと思っていたのだ。迷惑だと、笑わせる。会社にも私にも同僚にも…迷惑がかかっているから電話してんだ!


何て事はない、都市部に作った事務所は直属上司2人が共に暮らす愛人の囲い部屋だったのだ。そうだよな、出張の時みんな泊まれるから便利と言ってたけど、結局その2人で泊まっていたしな、私がそこに出張の時はビジネスホテルだったしな。新事務所設立の時にベッドメイクまでさせられちゃったよ。事務所の名目で家賃も会社持ちなのにな…赤字の原因の一角は機能していないその事務所にもあったのにな…そういえば女上司は専務の為に消費者金融でお金を借りただとか、専務のパンツの洗濯をしただの意味不明な事を言っていたな、何ヶ月も仕事を休み皆が必死になっていた時も顔もださず、普通はクビになってもおかしくないはずなのに、働かずとも給料もでていたのも…そうか、それが全てか…



私は辞める事を決意します。直属上司に対して嫌悪感しか抱けなかったからです。ちなみに同僚は出張先でその上司2人と一緒になった時に、周りに色々言われてその事実に気付いていたそうでした。


そして私は辞表を提出します。何も言わず、ただ辞めれば良かったのですが、流石に会社の存続に関わるリスクもあったので、洗いざらい社長に報告します。暴走していく2人に歯止めをかけれるのは社長しかいませんでした。


辞める必要は無かったのでは?と後に言われることもありましたが、直属上司2人の事実を知りながら、専務の奥様や小さな娘達、娘達は私にもなついてくれていましたので、不器用な私はそこに以前と同じように接する事は出来ないと感じました。また、所詮は家族経営、遅かれ早かれ社長の息子である専務が社長になるのは目に見えています、例え専務が会社のコンプライアンスから外れても、会社を継ぐのは息子の専務、それは変わらない。私が事実を知り暴露した今、今後会社が立ち直るのにも立ち直らないにも、私はもう厄介者でしかないと自分で判断し、自分の為にも辞めるべきと決めたのでした。

そして、私は少し心を病む事になります。



※苦言を呈す時、それは常に会社であったり、その人の為であったりが先立ちます。そうしておけば、その時は恨まれても、後々に本人が気付き、感謝すらされる事もあります。しかし、全く通じない相手も確かにいます。大事なのは、良い意味でも悪い意味でも期待しないことでした。ちなみに、後々感謝されるのは、大抵は若い子。出来上がった大人は不機嫌になるだけでした。