そして私はニートになった… その14  この時死んでいれば…

期間雇用を終了し、私はやりたい事をやる為に準備を始めます。紆余曲折ありましたが、準備は進み、何とかそれを始める事が出来ました。


私は酪農の手伝いをしながら、その酪農家の土地を借り、自分のやりたい事を実行していました。この頃、永く付き合っていた恋人には別れを告げられ、私の心の寄りどころは、自分のやりたい事だけになります。


私のやりたい事は『養蜂』とちょっと変わったジャンルだったのですが、元々経験があり、そこに関わる全ての業務を1人でこなす事ができました。酪農を手伝いながら、養蜂をする、そんな日々が続きます。


しかし、当然の様にトラブルが起きます。蜂に刺されアナフィラキシーショックを起こすのです。何度も蜂には刺された事もあります、それも一回や二回ではなく、軽度のものも含めれば3ケタに近い程刺されていました。通常アナフィラキシーショックと言えば食べ物のアレルギーや虫毒ではスズメバチが一般的かと思います。私はミツバチでのアナフィラキシーは恥ずかしい話、無いものと思っていました。


アナフィラキシーショックを起こした私は、立っていられなくなり嘔吐を繰り返します。そして、呼吸困難になり、尿や便が漏れ出していました。糞尿の漏れは止めたくても止まらず、勝手に流れ出てくる状態です。その時私は、とにかくトイレに行かなければという強い思いがありました。しかし、トイレに向かう為に立ち上がったのは良いのですが、瞳孔が開いたのか、視界はキラキラ輝き上手く視認する事さえ困難な状態でした。アスファルトは川の流れの様に見えだし、草木も極彩色に輝きます。三途の川ってこれなのかなと思いながらも、私はトイレに向かうのに必死でした…無事にトイレにたどり着き、パンツを脱ぎ便座に腰掛けた時、私はついに意識を失いました。


正直私は、死を覚悟していました。私には友達もいない、恋人とも別れた、家族には迷惑をかけてばかり、私が死んだら家族には保険金も入るし、まぁいいやと、自殺でなく事故ならば後々家族も苦しまなくてすむ、万々歳だ。ただ、ウンコを漏らしながら死ぬのは恥ずかしかった。


二時間程経過した頃、私はトイレで目を覚まします。トイレの床は水びたしでした。最初は尿かと思いましたが、私の着ていたシャツが水浴びしたくらい濡れていて、それは尿ではなく汗だと理解しました。

助かってしまった…私は喜びより、悲しみが大きかったです。こうなってしまった以上、私の心の寄りどころでもあった『養蜂』はもう出来ない事を心のどこかで解っていたからでした…



そして私は、医者の診療にかかり、案の定養蜂は出来なくなります。そして、養蜂を辞め、農家の手伝いも辞め、引きこもりの道を辿ります。


※本当にこの時死んでいれば、自分にとっても家族にとっても最良のタイミングだったと思います。何故生かされたのかは、今の私には解りません…