そして私はニートになった… その15 恥の概念から立ち直る

半年程の引きこもり生活を続けていた私にまたしても転機が訪れます、祖母が亡くなり親戚が集まるのですが、誰かが何を言うわけで無くても、そこに私がいるだけで惨めで、恥ずかしい感情に襲われるのです。私が惨めで恥ずかしいのは解りきった事でしたので、それは仕方がないのですが、私でなくて両親が惨めな思いをしているのです。実際はそうでは無かったのかもしれませんが、少なくとも私にはそう見えました。


私は奮起し、仕事を探します。何でも良かった、ただ、実家や地元からは離れたかった。地元は田舎でしたので、仕事があっても民間企業で当然給料は安い、それと以前所属していた商工会長の会社もブラック企業であった上、倫理観に欠ける部分が多々ありました。商工会長の会社でそうなのだから、正直他会社も期待できない、そんな思いもありましたし、何よりも両親と共に入るのが自分を甘やかす事になるとも思っていたのです。



何とかかんとか都市部での仕事を見つけます、それは業務委託(個人事業主)として、会社から商品を仕入れ、会社が用意してくれた場所にてその商品を販売する、売れれば売れるだけ収入は良くなり、売れなければ収入どころか赤字という形態の仕事でした。私は販売経験もありましたし、その会社の商品も全国の北海道物産展や中華展でも販売され、全国百貨店や大型スーパーでも実績のある商品でしたので生計をたてる自信はありました。



研修が始まり、仕事も出来ていたのですが、またしても問題が起こります。ある日、賞味期限切れの商品が送られて来て、それを売れとの指示が入ります。当然最初は断りましたが、会社の指示を聞かないと干される(売り場は会社が決めますので、まるで人のいない地方にまわされたりする)ので、私は、その指示を最終的には受けてしまいました。ただ、私はその賞味期限切れの商品は販売せず、こっそり処分しています。仮に賞味期限切れを売ってばれた時、会社は確実に販売員の責任にし、その罪をかぶせるのは察しがついていたからです。(賞味期限切れを売れとの指示はメールでしたので証拠があります。)


会社の悪事に嘆きながらも、ようやくありついた仕事を手放す勇気もなく、また告発する勇気もなく、そのことに見てみぬふりをし、仕事を続けていました。


地方に出ていく事も多く、車で夜を明かす事が殆どでしたが、結果を残し、取引先に顔を覚えて貰い、何とか軌道に乗ります。収入もそれなりに余裕が出来てきたので、拠点としてアパートの部屋でも借りようかと思っていたその時、タイミング悪くまたしても問題がおきます。


それは、内部告発でした。検便偽装と食品偽装…私の所属する所とは離れていましたが、当然同じ会社です。内部告発をした方はしっかり証拠も残していましたし、ちょっとしたニュースにもなりました。会社はその偽装行為を内部告発をした方の所属する地域が単独でやったと言っておりましたが、私には心当たりもあり、会社への不信感はもはや限界でした。

それでも、家には戻りたくない。息まいて家を出てきたのに、これで終わりたくない…そんな思いで仕事を続けていました。

が、

そんな違法行為を取引先が許す筈も無く、私の所属していた地域の取引先も当たり前ですが、取引停止になります。そうなると、当然売り場が無くなり収入自体が無くなってしまいました。貯金はどんどん無くなり、人もどんどん辞めていく事になります。


それでも、私は続けようとします。少し我慢すれば…と、会社も悪事がバレこれからはちゃんとするだろうし、何より私達を信じて取引を続けてくれる取引先も何件かある。きっと良い方向に向かっていく…


幻想でした、会社はそんな事件があったにも関わらず、私に賞味期限切れの商品をよこすのです。わざわざ賞味期限の書いた入れ物からだして、袋に詰めて用意されていたのですが、私は思い出しました。数ヶ月前に本部を訪れた時に、賞味期限切れ間近のそれが大量に余っていた事を…さらに賞味期限の大きく書いた入れ物とは別に、その入れ物自体を入れていた大きな箱にも横に小さく賞味期限が刻まれている事も…大きな箱は見つけたので、こっそり確認すると、やはり賞味期限は切れていました…

しかし、今回は最初の段階では賞味期限切れに気付けなかったので、少しですがお客様の手に渡ってしまいました。

私は、落ち込みました。会社に反省はない、偽装は当たり前、そして収入も無い。

私はまたしても辞めることを決意しました。

正直私も内部告発をしよう。もしくは内部告発した方に協力しようと思いました。ただ、私と違い、家族を支える方、この仕事でしか生きていけない様な方も同じ販売員にはたくさんいましたので、それは辞めました。この時私の中では過去の経験から、食品業は基本的に同じ様なことをしている。表に出るか出ないかだ、それが当たり前なんだと自らを納得させていました。

今回の会社はそれが表に出ただけ、前いた会社も検便偽装はしていた、他社でもそんな話はある。ならば、もうそれでいいではないか。私が何かをしたって解決しない。諦める事にしたのです。



そして、恥ずかしながらまたニート、もう働く気すらしない。貯金がまだ少しある、FXでもやって食いつなごう…

当然失敗、貯金は後僅か…

もういいや、貯金がつきたら、首でも釣ろう…